 

 瀬戸氏は、ガース・ブリュレの作とみなされてきた北仏語の抒情詩と、オック語によるオジル・デ・カダルスの教訓詩を皮切りに、「トポス」の方法論を提示された。現代の読者には脈絡や整合性なく挿入される語句を「トポス」ととらえ、当時の共通した意識的基盤を理解する手法である。両詩には『雅歌』(Ⅲ-1)に基づく定形句が認められ、このことは後世の不必要な修正からも裏付けられる。また『秘中の秘』養生術に関する部分にもトポスの例をみることができる。オック語版とラテン語版の「四季の健康術」における部分と、「食後の胃もたれ」についてのラテン語版と古仏語版を比べると、女性の扱いに関しておどろくべき対処法が紹介されている。背景にはアラビアの百科全書的著作の伝統が影響を与えた可能性が高い。このようにギリシア・ラテンの西欧古典の伝統以外にも8世紀以降のイスラムの伝統がトポスとして見出されるのである。
瀬戸氏は、ガース・ブリュレの作とみなされてきた北仏語の抒情詩と、オック語によるオジル・デ・カダルスの教訓詩を皮切りに、「トポス」の方法論を提示された。現代の読者には脈絡や整合性なく挿入される語句を「トポス」ととらえ、当時の共通した意識的基盤を理解する手法である。両詩には『雅歌』(Ⅲ-1)に基づく定形句が認められ、このことは後世の不必要な修正からも裏付けられる。また『秘中の秘』養生術に関する部分にもトポスの例をみることができる。オック語版とラテン語版の「四季の健康術」における部分と、「食後の胃もたれ」についてのラテン語版と古仏語版を比べると、女性の扱いに関しておどろくべき対処法が紹介されている。背景にはアラビアの百科全書的著作の伝統が影響を与えた可能性が高い。このようにギリシア・ラテンの西欧古典の伝統以外にも8世紀以降のイスラムの伝統がトポスとして見出されるのである。
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