ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所 第二十六回研究会報告
去る2019年5月11日に早稲田大学において、当研究所の第二十六回研究会が開催されました。
科研基盤研究(B)「中近世キリスト教世界における宗教と暴力-対立と和解のポリティクス-」との合同研究会でした。
プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
お名前隣のPDF版のテキストリンクに要旨記事を掲載しております。
報告者:齋藤敬之(早稲田大学文学学術院助教)報告要旨(pdf)
題目:「中近世ドイツ犯罪史研究における暴力:研究動向の紹介」

齋藤氏は、ドイツにおける犯罪史研究が、(N・エリアス的)文明化論の内包する進歩主義的バイアスへの批判的応答として発展したことを指摘した。中傷や挑発を含む名誉棄損への応酬の一過程として、暴力の「儀礼性」に着目したM・ディンゲスと、身体的攻撃に至るエスカレーションの過程を分析したG・シュヴェアホフらの視点は、下層市民と暴力の関係性に着目したJ・アイバッハや、紛争決着の特殊形態としての決闘を論じるシュヴェアホフ自身の議論によって、近世を通じた暴力の社会的位置づけの変化を論ずる方向性へと深化した。こうした方向性を踏まえつつも、P・ヴェットマン・ユングブルートやM・ホーカンプ、L・ベーリッシュらは、名誉と暴力の自明的結びつきに疑問を呈し、司法権力及び民衆による「正当な」暴力行為と「不当な」それとの峻別、また「儀礼的」自己統制を超えて暴力が発現する局面に着目している。暴力を侵害行為として包括的に理解し、社会すなわち第三者、公権力の認識・対処にも着目する必要があるというF・レッツの主張を紹介して、今後の研究の方向性を提示した。
報告後、会場からの質問を交えたディスカッションが行われました。
盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも記して感謝申し上げます。
お運びくださった皆様、ありがとうございました。
(文責 鈴木)
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