ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所 第二十回研究会報告




去る6月25日(土)に早稲田大学において当研究所の第二十一回研究会が開催されました。
「早稲田大学高等研究所セミナーシリーズ〈新しい世界史像の可能性〉」との共催でした。

プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
()内からPDF版の要旨記事にリンクを張っております。

報告(1)  林賢治(早稲田大学大学院博士課程)報告要旨(PDF版
「12世紀ヒルザウ系修道院の知的ネットワーク―書物の移動、人の移動―」
報告(2)
 影山緑子(早稲田大学大学院博士課程)報告要旨(PDF版
「ユマニストによる権威の再構築―アラン・シャルチエの対比列挙をめぐって―」





林氏は12世紀ドイツのヒルザウ修道院長による慣習律を導入した修道院群における知的状況に関して、多くの史料を交えて詳細に検討された。とりわけ、従来の研究で評価が分かれる蔵書目録に加え、修道院において教育や典礼を司ったアルマリウスによる書簡を取り上げ、書物の貸し出しや人物の派遣などを分析された。その結果、ヒルザウ系修道院の間ではアルマリウスを中心とした人的な関係に基づき知識や書物の認識が共有され、知的なネットワークが形成されていた可能性が指摘された。



影山氏は14世紀末から15世紀前半のパリのユマニスト、アラン・シャルチエの『希望の書』(1430年頃)において、歴史上の哲学者や賢者の名前が頻出する点について詳しく検証された。人物は固有名詞、ときには著作とともに列挙され、「神のごときプラトン」などの形容詞や呼称を伴うなど、周到な権威付けが試みられていた。同氏はそれらの諸相を先行作例と対比させながら、アリストテレス哲学の解釈の緒伝統や、七自由学芸との関係、イタリア・ユマニストの影響など多角的に分析された。

盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも付して感謝申し上げます。 お運びくださった皆様、ありがとうございました。
(文責:毛塚)

Designed by CSS.Design Sample