ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所 第二十四回研究会報告


去る2018年1月20日に早稲田大学において、当研究所の第二十四回研究会が開催されました。
「早稲田大学高等研究所セミナーシリーズ〈新しい世界史像の可能性〉」との共催でした。





プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
お名前隣のPDF版のテキストリンクに要旨記事を掲載しております。
全体のテーマ 「モノをめぐる歴史のこれまでとこれから」

報告(1)菅原裕文(金沢大学准教授)報告要旨(pdf)
「カッパドキア研究の現在と展望
―美術史研究におけるヴァーチャル・リアリティーの可能性― 」



報告(2)黒田祐我(神奈川大学准教授)報告要旨(pdf)
「中世と近現代との「対話」
―アンダルス(イスラーム・スペイン)の遺したモノをめぐる議論のゆくえ―」




菅原氏は、中世のビザンティン美術の貴重な足跡をたどることができるカッパドキアの聖堂作例を紹介し、丁寧に先行研究を追うとともに、聖堂の制作年代の客観的な測定方法をはじめとした緒問題を指摘した。これらに対し、菅原氏のヴァーチャル・リアリティ・モデルを使用した新たな研究方法では、一次資料を客観的かつ詳細な三次元データとして精査することができ、建築史、美術史、考古学と多角的な研究が初めて可能になることを具体的な作例とともに示された。




黒田氏は、現代のスペインにおける中世スペインの歴史認識をめぐって、イスラームの遺構を抱えるアンダルスがどのように解釈されてきたか、近現代、とくに19世紀に誕生した三つの「神話」を軸に紹介された。アンダルスは異質なものとして、征服する他者として、寛容と先進文化の象徴として、さまざまな側面で取り込まれてきた。それらの認識の変遷を丁寧に分析し、現在の歴史学研究の動向を紹介しながら、今後の歴史認識の展開の可能性について指摘された。




報告後、会場からの質問を交えたディスカッションが行われました。
盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも記して感謝申し上げます。 お運びくださった皆様、ありがとうございました。

(文責:毛塚)


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